poison 2 毒の贈り物?

giftはノルウェー語ドイツ語では毒、結婚という意味があるという事を記事poison 1でお話いたしました。
その続編です。

デンマーク語、アイスランド語でもgift(アイスランド語では少し綴ㇼが違い、giptです。アイスランドでは古ノルウェー語が話されています)が、アイスランド語では贈り物、才能、結婚式などの意味で毒の意味はありません。

さて、これら一連の名詞・形容詞は動詞give に当たる動詞(ドイツ語geben)から作られたもので、gebenは着たゲルマン諸語で特に「娘を嫁として与える、嫁に出す」という文脈で使われていたということです。

夫が教えてくれました。

結婚することは毒?などと考えましたが、そうではなかったようです。

ゲルマン語を含む印欧語族の人たちは厳しい家長制度の下で生活していた…それを物語っていますね。

毒は11世紀に古高ドイツ語で出現したgiftの用法で、それまでは毒と言えばeiter(動物性の毒) luppi(植物性の毒)の二つが使われていたのだそう。

動物由来tとか植物以来と関係なく「害を与える目的で贈る危険物」という意味でgiftが11世紀に使われ始めたのです。

「(魔法を使って)調合する」タイプの毒という意味で、ラテン語の venenum 毒を訳出するために使われたそうです。

geft(与えること)が投与する、調合するという意味を帯びて「調合して作った毒」という意味で使われるようになったわけです。

毒がもっと効くようになって・・・そして毒殺がポピュラーになった?

eiter luppi, giftがそれぞれの意味を保ちながら、しばらくは別々な意味で使われていたのだけど、 eiterと luppiは中世において段々使われなくなったようです。

植物や動物から抽出して作る原始的な毒を思わせるeiterや luppiよりも、もっと最新の 技術を駆使して様々な材料を調合して作る「毒」をイメージさせるgiftの方が好まれたんだそうですよ。

 それが北ゲルマン諸語にも16世紀から広がったのでスエーデン語でもノルウェー語でも毒という意味があるのですね。

毒という言葉にはtoxicもあるのですが、これはギリシア語のフレーズoxicon pharmakon(意味は(poison for arrows、つまり「矢の毒」)から来ているのですが、肝心のtoxiconの方が「矢」を意味し、「毒」を意味するのは pharmakon。

ドイツ語のgift が「毒」という意味は古典ギリシャ語の影響だそう。

まず、giftにはもともと「与える事」という意味がありました。

また古典ギリシア語のdosisが「与える事、贈り物」のほかに「薬の容量」という意味がありました(ラテン語 dosis”容量”の語源)。

この影響で「毒」という意味も生じたということです。

毒の歴史はなかなか面白いです。

まだ続編を書くことになりそうです。