高貴な人々のシンボルとなったフォーク

皆さんのお家ではどれくらいの頻度でフォークを使っていますか?

我が家では、夫だけがたいていフォークで食事をしています。

仕方ないか・・・。

歴史の上では、フォークはなかなか普及しなかったようです。

ナイフはかなり早い段階から愛用されていたようですが、あくまでもそれは肉を断ち切るための道具で、食器とはみなされていなかったみたい。

スプーンはもっと古くから、おそらく2万年前に西アジアで発明されたそうです。

spoonて語源は木片ですって。

ギリシアやローマの時代には早くも広く使われていたとか。

ルネッサンス以降、なぜかスプーンは愛のシンボルという縁起物になり、恋人同士でプレゼントするのがエチケットとされたとか。

また、今の時代、my箸とかレストランに持参する人がいるけど、それと同様、客としてどこかに出かけるにもmy spoonを持参するのが当たり前で、主人は来客用のスプーンを用意する必要なんてなかったんだそう。

食器の中で最も歴史の新しいのがビザンチン帝国で考案されたというフォーク。

2股に分かれた小型のフォークがイタリア中部のトスカーナ地方に持ち込まれたのは11世紀に入ってから。

当時は「小さな熊手」を意味するフェスキーナと呼ばれていたそうです。

しかし、これがヨーロッパにおける最初のフォークの登場というから彼らの手食習慣がいかに長く続いていたかが良く分かりますよね。

この事に対しても、頑迷な聖職者たちを中心に多方面から反対の大合唱が起こったのだそうです。

「神の恵みである食べ物にふれることが許されるのは神が作った人間の手のみ、妙な道具を媒介にするとはとんでもない」と。

そんなわけでせっかくのフォークもごく一部の酔狂な人を除いてはその後も長い間お蔵入り。

ようやく日の目を見るようになったのは15世紀の末とか。

それでも、当時はフォークを使用するのは女々しいきざ野郎と見られたりで、冷笑の対象であったとか。

この様にフォークに対する偏見は根強かったのだけど、カトリーヌ・ド・メディチによってフランスに伝えられたのちも、人々は食べ物を手で掴む習慣から逃れることはなかったみたいです。

手掴み時代には汚れた指を洗うために食卓に水鉢を置くことが必須とされたましたが、現在もレストランなどにみられるフィンガーボールは当時の名残であり、ナプキンも手を拭いた習慣を懐かしむためのアイテムに過ぎなかったわけ。

ところで、私はフォークが普及しなかったのは別の理由があったような気がします。

何だと思いますか?

古代、フォークは処刑にも使われたのです。

処刑に使うようなものを口に入れるものに使う?

古代、いや数世紀前の人たちに(その場に多くの人たちが集まった)とって人を処刑するシーンは大変な余興であり、処刑される人が長く苦しむようフォークは使われたのだそうです。

フォークを突き刺し、じわじわと血が流れ長くその人が苦しむように…簡単に死なない様に・・・。

人を吊るすにも足がぎりぎりにつくか付かないかの状態で吊るし、なるたけ長く苦しむようにしたとか。

人間て恐ろしい…17世紀18世紀の人たちもそんな世界に生きていたのです。

日本は平和だったと思いませんか。

人の心はそう変わらないと思います・・・私がよく言っている何かが変わるには3代かかる、ってことです。

フランスでは宝石をちりばめた装飾品とかしフォークはな単なる「宝の持ち腐れ」として埃をかぶったまま棚の奥の方にしまわれてしまっていたとか。

つまるところ、イタリア以外の国では18世紀にいたるまでフォークが脚光を浴びることはなかったということ。

それでも時の流れで、フランスでは革命直後にフォークが急速に見直されるようになっていったようです。

しかし、それは地位をはく奪された貴族が平民との差別化を図ろうと手掴みではない食事作法を始めた・・・見栄っ張りのジェスチャーに過ぎなかったみたい。

それでも、そうした風潮が広まっていくと、フォークは高貴な身分の者が使う上品で贅沢品の象徴へと変わり、3本指であっても手つかみの食事は下品な行為になり下がった、というわけ。

当時は2股式が主流、しかし、実用性に乏しいとして3本股、4股のものが開発されて人気を呼び、やがて人々は現在の様にナイフとフォークを扱う食事に慣れて行った。

フォークが市民権を得て(つまり手つかみでなくなって)ほんの2世紀足らずの歴史というのも驚きですよね。

食事が済んだら皿の上にナイフとフォークを交差しておくという習慣があります。

現在では食事が終わった事のサインと理解されているが、もともと17世紀にイタリアの貴族が始めた時は交差しておくことは宗教的なシンボル、つまり、十字架を表していた・・・神の恵みに感謝する敬虔なマナーだったそうです。